病理医研究者のぼちぼち日記

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GISTのリスク分類について

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GISTのリスク分類について

  

 Gastrointestinal stromal tumor (GIST, 消化管間質腫瘍) の病理診断においては、リスク分類が求められる。なぜなら、リスク分類によって、予後予測に役立つだけでなく、術後化学療法の適応の決定に資するからである。

 

 GISTの悪性度を細胞形態のみで判断することは困難である。

 唯一、他臓器への転移があれば悪性であると断定が可能である。

 よって転移がない場合には、良性/悪性と診断するのではなく、リスク分類(高、中、低)を行う。

 

 リスク分類は主として2つが用いられている。これらの分類はいずれも、腫瘍径と細胞増殖能の指標を組み合わせてつくられている。これら2つのリスク分類は GIST診療ガイドラインに採用されている。

 

GIST診療ガイドライン 2014年4月改訂(第3版): 構造化抄録CD-ROM付

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● Fletcher 分類

 

 最も汎用されているリスク分類は Fletcher 分類 (Fletcher CD et al: Hum Pathol 33: 459-465, 2002PMID: 12094370)で、この分類は腫瘍径と核分裂像数を組み合わせたものである。この分類はまたGIST診療ガイドラインにも採用されている。

 

 2項目のみで評価が可能であるが、原発臓器によるリスクの違いが取り入れられていない。また、Ki67(MIB-1) 標識率や壊死の有無も組み入れられてはいない。

  

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● Miettinen 分類

  

 GISTは腫瘍発生臓器によって予後が異なることが示されている。そこで、これらを取り入れた Miettinen 分類 (Miettinen M et al: Semin Diagn Pathol 23: 70-83, 2006PMID: 17193820)が現在では使われるようになりつつある。GIST診療ガイドラインにもこの分類が取り入れられている。

 

 

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● リスク分類を行う上での注意事項

 

 核分裂像に関しては対物40倍視野で核分裂の数を調べ、50視野を合計して(/50HPF)算出することとなっているが、視野数によって結果が異なるので、視野数を明記することが必要である。

  

● その他の予後予測因子

  

 臨床的な予後予測因子としては、腫瘍径(≧5cm)、周囲臓器への浸潤、血行性転移、腹膜播種、腫瘍破裂、不完全切除などがあり、病理においては核分裂像数(≧5/50HPF or ≧10/50HPF)、腫瘍細胞の多形性、壊死・出血の有無などが挙げられている。遺伝子的にはc-kit、PDGFRA、PDGFRBなどの遺伝子の変異が検討されている。

  

● 文献

 

1)Fletcher CD et al: Diagnosis of gastrointestinal stromal tumors: a consensus approach. Hum Pathol 33: 459-465, 2002

 2)Miettinen M, Lasota J: Gastrointestinal stromal tumors: pathology and prognosis at different sites. Semin Diagn Pathol 23: 70-83, 2006

  

● 参考になるサイト

 

 ・NPO法人稀少腫瘍研究会 (旧GIST研究会) 

  

 

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